限られている日本の打つ手

日本の打つ手
 「危機はチャンスでもある。日本に対する期待の大きさ、日本の果たさなければならない役割の大きさを感じた。日本はサミットを主導することができた」などと偉そうにコメントしているが、実際はブッシュ大統領のお先棒を担ぐ些細な役割しかなかったことは、ワシントン・ポスト紙の記事から窺えることだ。


 景気後退の懸念は各国共通で、ドイツは総額500億ユーロ(約6兆円)、フランスも1750億ユーロ(約27兆円)規模の財政出動を打ち出した。中国は4兆元(57兆円)という大規模な景気刺激策を発表している。米国でもオバマ次期大統領が1000億ドル(10兆円)規模の対策を検討中である。

 負の連鎖を断ち切るために、各国が協調した財政と金融政策が必要である。日本が打ち出した追加経済対策の効果は定額給付の成長率の押し上げ効果は0・1〜0・2%程度しかないと分析されている。70%の国民は、むしろ財政悪化を懸念する声の方が強く、ばらまきをするくらいなら、福祉や医療に重点的な補強をすべきだとの意見が多い。

 長期債務は国と地方合わせて800兆円であり、景気低迷で税収増は見込めず、今年度の税収は大幅な落ち込みが確実だ。これ以上に新たな財政出動に踏み切る余力はない。金融政策でも状況は同じだ。日銀も欧米に歩調を合わせて、政策金利を7年7カ月ぶりに0.5%を0.3%にした。市中では1%台の低金利が続いており、住宅ローンの返済や中小企業の借り入れに与える影響はごくわずかである。これ以上は日銀としても金利政策で、欧米と協調的な歩調を合わせるのも難しい。

 財政・金融政策では日本には打つ手が限定されているから、首相が偉そうに世界に貢献するとは言っても、財政・金融政策で協調路線がとれず、日本が世界から孤立しかねない懸念の方が強い。このような状況を世界各国は十分に認識しているから、来年4月に予定されている、次の金融サミットが東京に来る可能性は低い。
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