自動車産業の救済

自動車産業への資金投入
「ここに来るのに、デトロイトから一般の航空機で来た人は手をあげて下さい」と米議会の公聴会での質問に対して、ビッグスリーの代表者たちは誰一人として手を挙げなかった。財政危機を迎えて、公的資金の投入を要請しにきたにしては、自家用飛行機を使っているようでは、企業の経営者としては、まだまだ危機意識が足らないことを暴露されてしまった。


 第二次大戦後、アメリカ経済の背骨を支えてきた自動車産業が危機に瀕している。3社とも株価は破産寸前というわずか数ドルに下落している。次期大統領は救済を訴えているが、相変わらず自由主義経済の看板を下ろしてはいない共和党政権では資金供与に対するアレルギーが強い。車は民主党の強固な地盤であることも関係している。

 1970年代の最盛期に、車や鉄の巨大産業では、各企業は儲けた金をゴルフ場、自家用機、ホテル建設などに使い、肝心の本業への投資を怠り、研究と技術開発に対する意識は低かった。欧州や日本からの進出もあったが、常に新しいことを好む風潮のある米国では、もはや車や鉄の産業へは懐古趣味しか残っていなかった。GMでの最近の収益の半分は金融であったことが、このことを雄弁に語っている。

 1980年代になると、MITやハーバード大などの超一流校の卒業生が、スモーク・スタック企業と言われる古い産業へ就職することなどは考えられないことであった。日本でも、最近ではこのような流れは顕著ではあるが、鉄に続いて、いまだに車は魅力的な産業と思っている人も多い。

 鉄や車の基盤技術は戦後、アメリカから多くのことを学んで日本経済の背骨を背負ってきたので、そのお返しとして、没落する鉄や車産業に対して技術支援を続けてきたが、もはや、手を差し伸べる時期を逸しているように思える。

 このまま放置して、GMが破綻することは、米経済へ与えるその影響の大きさから、共和党といえども避けざるをえないであろう。おそらく公的資金投与とは引き換えに、経営陣の総入れ替えが提案されると思う。米国の鉄鋼産業と自動車産業が潰れたら、困るのは日本であることの構図は変わってはいない。
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