私は貝になりたい

私は貝になりたい
 60年前の11月12日は東京裁判の判決が出された日である。戦争犯罪A級戦犯として絞首刑などを言い渡された28名以外にも、B級C級戦犯として判決を受けた人は1000人を越えていた。この裁判ではすべて冤罪であるとの論調はさておき、B級C級戦犯の中には、無罪であるべき人もかなり含まれていたと想像される。
 
 表題のドラマは、テレビ草創期の1958年にドラマ化されたもので、故フランキー堺氏の名演で記憶している人も多い。理髪店を営む男が兵隊に招集され、戦時中にアメリカ兵捕虜を殺害しようとした罪を軍隊から復員した後の裁判で問われ、BC級戦犯として死刑にされる作品である。上司の命令を拒否できたかどうかという、今でも会社で問題となる永遠の課題にも取り組んでいる。死刑執行の宣告を受けた男は、妻と子供に宛てて次のような遺書を書き始める。

 「せめて生まれ代わることが出来るのなら、・・・どうしても生まれ代わらなければならないのなら・・・いっそ深い海の底の貝にでも・・・貝だったら、深い海の底の岩にへばりついているから、何の心配もありません。兵隊にとられることもない。戦争もない。・・・どうしても生まれ代わらなければならないのなら、私は貝になりたい・・・」書き終えた後、男は絞首台に上がり、刑が執行される。

 この詩を巡っては、原作者とドラマの作者の間で著作権争いがあった作品である。このたび、判決60年を機会に、中居正広主演、福沢克雄監督で映画化された。NHKは便乗して、夫婦を演じる中居と仲間は紅白の司会者となるそうだ。
*加藤哲太郎「狂える戦犯死刑囚」、「私は貝になりたい」春秋社
中居正広主演映画「私は貝になりたい」(福沢克雄監督)
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