オバマ大統領の演説

施政方針演説を聞いて
 GMの2008年決算では純利益で3兆円の赤字、保険のAIGでは6兆円の赤字と発表されている。そして2009年度の財政赤字は170兆円となる予算が議会に提出されている。それでもオバマ大統領は金融危機の克服と財政赤字の縮小という矛盾する方針を高らかに打ち出した。45分にも及ぶその内容は経済の再建、エネルギー環境への投資、医療制度改革、教育への投資、財政赤字の縮小、安全保障対策、国民の夢の実現である。

  金融崩壊の米国よりも、日本の実体経済での景気後退が大きいことが明らかとなってきた。この原因は日米の産業構造の違いにあることで理解される。物づくり国家を標榜して世界第二の経済大国になった日本は鉄、車、電気製品、工作機械、ロボットなど工業製品の生産高が全産業の60%を占める日本の産業構造に対して、米国は15%にすぎない。金融が崩壊して縮小すればものが売れなくなるからである。

 米国の国土は日本の30倍であり、人口は3倍である。これらは膨大な資源とも余力とも考えることができる。大学や国立研究所での開かれた研究開発能力も健在であるし、食料自給率は100%の世界一の農業大国でもある。このように考えると、大統領が示した方針は実現可能性が高いとも思われる。

 迂闊にも首相はドルの基準通貨としての地位を守るなどと言質を取られたが、この意味するところは米国債をさらに購入することである。日本にはそのような余力はないことを認識すべきであろう。日本としては、物づくり国家を捨てることではなく、さらに世界最先端の物づくりシステムを構築することと同時に、それ以外の産業での生産性を高めることが一つの方向である。

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