国家の意思

光クラブ事件
 光クラブ事件は1948年に東大法学部学生の山崎晃嗣が仲間の学生と設立した貸金業が引き起こした事件である。僅かな出資金と巧みな広告で多額の資金を調達することに成功する。その資金を商店や企業などに高利で貸し付けて莫大な利益を得た。1年後には資本金400万円、社員30人の会社にまで発展する。




 当時の猛烈なインフレを抑えるためにGHQが指導した物価統制令が発令された。同じようなたくさんの金融業があったが、その中で学士金融などと最も目についた光クラブが代表して摘発された。山崎は取り調べに対して、大学で学んだ法律知識を縦横に駆使して切り抜け、不起訴処分となった。

 しかしながら、この影響で出資者の信用を失い、業績が急激に悪化していった。その後、他の仕事も始めたが成功できないまま、3000万円(現在では30億円に相当)の債務不履行となり、山崎は本社の一室で青酸カリ服毒自殺した。

 同じように法律に触れることをしても、国家としてはその全部を摘発することは不可能であるから、代表して目につく人物を逮捕することは、いつの時代でも行われてきた。これにより、国家の制定する法律の方向を万人に知らしめることができる。これこそ国家の意思ではないかと思う。この事件は小説やドラマとして、下記のように、さまざまに描かれてきている。
保阪正康『眞説 光クラブ事件』
高木彬光『白昼の死角』
三島由紀夫『青の時代』


http://iiaoki.jugem.jp/