ケインズの精神

ケインズ理解

 J.M.ケインズ(1883-1946)は英国政府の役人として、1944年7月に戦後の経済体制を議論するブレトン・ウッズ会議に出席していた。第一次世界大戦の1919年のパリ講和会議にも出席したが、ドイツに対する過大な賠償に反対して英国では批判を浴びた。しかし巨額賠償がナチスの台頭を許したことは知られている。

ケインズの主著である「雇用・利子および貨幣の一般理論」は1936年に公表された。この本で有効需要の原理を提唱して、市場に任せた場合に有効需要が不足するケースが出てくることを指摘した。この場合には政府が減税や公共投資をすることで、景気の回復が可能であることを示している。

各国政府が財政政策を増大させて需要創出に邁進している姿は、財政赤字や非効率政府運営を生むとして、排除されていたケインズ主義の再登場というのが一般的な見解である。ところで、この考えは80年前の大恐慌では効果はなかったとされている。本当の景気回復は第二次世界大戦が終了した後にきている。

15兆円の補正予算ケインズ主義をとり入れたものと理解されているが、このうち半分は建設国債によるハコモノ公共事業である。ケインズが考えていたことは、無駄な事業に投資することではなく、もっと高度な思想であり、国民生活の安定を目指すものであった。

 不確定な未来に対処するためには、生活の安定を維持しながら、それに寄与する投資を考えていくことこそ重要という。そのためには生活の安定が基礎とならなければならない。ここに国家や中央銀行の果たすべき役割があることになる。

要するに、景気が落ち込んだ時に、政府が財政出動により有効需要を生み出すことの目的は、国民が不確定な将来に安心して対処できるようにするため、国民生活の安定にこそ向けられるべきであることになる。橋や道路の建設が国民生活の安定に寄与するというが、そうではなくて、福祉、年金、医療など国民生活に直接的に関係することに投資すべきというのがケインズの基本的な思想と理解している。
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