自動車の家電化

トップ企業の驕り
 6月末に豊田市の本社でトヨタ自動車株主総会が開かれた。議事も終わりかけたころ、ある株主が「渡辺さんがトヨタを2.2兆円の黒字から4500億円の赤字にした。ギネスブックにこの赤字を申請したらどうでしょうか。もう破られることもないと思うので」と提案した。渡辺氏は「ご意見は今後の参考にさせていただきたい」と冷静にかわした。

トヨタの経営内容は販売量と為替で説明できる。前期に4610億円、今期には8500億円もの営業赤字の見込みである。今期の連結販売台数650万台は、頂点だった891万台から、240万台が消滅した。為替変動も02年の1ドル=125円から比較すると、30円も円高に振れてしまっている。

 優良企業への、これほどに手痛い打撃は1995年の奥田体制で始まった拡大路線の結果であることは目に見えている。この路線で、設備投資は減価償却費をつねに上回り、ピーク時には1.5兆円台まで膨張し、従業員数もこの10年に10万人以上増えている。雇用や設備を維持するため、国内生産に占める輸出比率は6割を超えた。

 「問題解決のスピードと徹底が十分でなかったと反省している」と渡辺氏も5月の決算発表で認めている。新社長は「3期連続赤字は回避する」と明言しているが、過去の栄光を追い求めるだけでは方向性は見えて来ない。自動車産業という生産構造は、ガソリン車からの転換という技術革新を迎えて、かなり勇気ある戦略が求められている。自動車が電気製品の中に組み入れられる事態に対処する構造変換への方策が必要である。
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