村上文学の謎

村上作品の謎
  「1Q84をどう読むか」とか「1Q84を読み解く」などという解説本まで出版されている話題の本である。読書感想文を書くとしたら、面白かったが退屈な本、理解できたが難解な内容、魅力的な登場人物もいたが意味不明な人もいたなどとなるかもしれない。



  どうしたらビジネスで成功するかとか、脳の活性化方法、優等生のノートの作り方みたいなハウツーものばかりが氾濫している出版界では特異な書物かもしれないが、200万部というベストセラーは話題性十分である。さらに売れ行きを伸ばして年末までには300万部に到達すると見られている。1年後には「1Q84-3」が出版されるであろう。



  読書という動作には、未知なことを知る楽しさ、自分とは全く異なる世界をのぞく興味、専門的な知識を習得する学習、単なる暇つぶしのためなどと様々な目的がある。そしてその内容には、どうしてそうなのかとか、登場人物に何か寓意が込められているのではないかとか、意味不明なことの謎を解くことなどがある。ところで、これまでの村上作品にも共通している要素は、要するに、何か意味や意義を見つけることを拒否している空虚な世界を描き出しているように思える。


 今年のノーベル文学賞チェコ出身のドイツの作家が選出された。主な作品は共産主義社会で抑圧されて鬱屈した心理描写を描いたもので、ここのところ文学賞受賞者に共通している民族的、政治的な背景を踏まえているものだ。村上作品はかなり英語訳でも出版されているから、注目されているが、何か意味づけを許さない内容では現在の選考基準では文学賞の対象とはなりえない。
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