情報の偏り

情報の受け止め方
  NY駐在時代に良く経験したことであるが、全く同じニュースでも、米国と日本とでは報道の質と量がかなり異なるケースが多い。報道は些細なことでも、人の目を引くために針小棒大になることがあるし、日本人には受けるニュースでも、米国人には面白くはない場合が多い。



  日本か日本人のことがNYタイムズの1面に写真付きで載ることは10年に1回あるかないかである。これが11月5日に起きた。言うまでもなく松井選手の写真である。ところでNYに住むと誰も国籍などを気にしなくなるから、松井が日本人であり、米国に来る前には日本のプロ野球で活躍していたことを知っている人は少ない。


  新政権では首相や外相の発言が問題となり、13日のオバマ大統領の来日を前にして日米関係に亀裂などと大新聞では解説している評論家がいる。確かに、これも米国の一部の人が、自分の存在感を示すために、新政権は反米で北朝鮮よりも扱いが難しいなど解説している。実際には、米国では大部分は冷静であり、今さら日米関係にひび割れが生じたなどと思っている米国の政府関係者はほとんどいないことも事実だ。


  GMが破綻してビッグスリーが経営危機に陥ったことで、日本では米国の産業は苦境に立っているなどと報じられていた。しかし実は米国では鉄や車は煙突産業で、今ではマイナーな企業であるから、それほどの影響は無い。MS、グーグルやアップルに代表されるIT分野、巨大企業がひしめく医薬品産業、ウォルマートなどの大型小売業、マックやコークなどの世界的企業、石油メジャー、穀物商社、ハリウッドなど、多種多様な産業で世界有数の企業がひしめいている。米国の強みは幅広い産業で国際的な競争力を持っている企業が多く存在することだ。だから、GMの破綻などは、昔の企業が駄目になったという程度で、全体に及ぼす影響は小さい。

 今年の国連総会でのわが首相の演説でも、議場を見れば座席はガラガラで、文章を読み上げるような英語の演説に耳を傾ける人は少ない。それにもかかわらず日本の新聞では、まるで鬼の首でも取ったような報道のされ方だった。しかし、NYタイムズの報道でも、たいして大きく取り上げられていなかった。25%削減などは別に珍しいことではなく、使い古されたジョーク程度のことなのである。


  日本の新聞やテレビのニュースだけを頼りにしていると、日本だけの情報バイアスに陥ってしまって、海外の人の認識と大きくかけ離れてしまう危険がある。できるだけ海外からの報道に接する努力をしていないと、ますます世界の孤児となってしまう。ネットでは、世界中の新聞や雑誌にただで目を通すことが可能となっている。せめてリーダーとなる人は、これらの海外情報に日ごろから気をつける必要があるように思う。
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