坂の上の雲(1)

明治懐古趣味
  司馬遼太郎著「坂の上の雲」のNHKドラマが始まった。この小説が産経新聞に連載された1968から1972年の日本は、今の中国みたいな高度成長期の真っただ中だった。サラリーマンは皆、坂の上にあると思われる何かを求めて、懸命に努力していた時代だ。この本を読み、頑張れば前途には光が見えていたように管理人もそうだったが、錯覚した人も多いと思う。



 

  司馬遼太郎作品の愛読者であるが、それは小説として面白いというだけのことで、何でも決めつける司馬史観に同調していたわけではない。例えば、明るい明治に対して、暗い昭和を対比させて、物語を構成していく手腕などに表れている。また、この作品のハイライトに出てくる203高地の攻防戦で、駄目な乃木希典将軍に対するできる児玉源太郎参謀などにも描かれている。軍国主義への反省からこの作品を書いたと著者は言うが、内容はむしろ、いかにして戦いに勝利したかということに重点があり、これが利益追求に走る高度成長期の企業人に受け入れられた。

   実は作者が映像化に対して反対していたのは、下手に描くと軍国主義賛美になるからである。最近では、このような司馬史観に対して反対の立場を述べる評論家も増えている。管理人は単なる小説として味わえば、それ程に目くじらを立てることもないと思っている。3年間にわたる放映というが、この先、どのように映像が作り出されていくのか興味がある。

 1868年の明治維新から140年の現在、日本がどのような考え方で、世界の中での歴史を築いてきたかを考えることは、これからの方向を探る一助となるかもしれない。近代史は高校の日本史でも教えられることは少ない。また正当に教えられる先生もあまりいないと思う。一つの視点として、明治、大正、昭和、平成などとの区切りで眺めるのではなく、連続した流れとして大まかに考えてみたい(この項続く)。
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