衰退国からの脱却

坂の下のドブ
  司馬遼太郎先生の小説「坂の上の雲」で描かれている世界は、若い人たちが青雲の気に燃えて新しい国家を建設していこうという立身出世物語である。失われた20年の直接の被害者である25歳から45歳の人たちは、これを見てどのように思うのか興味のあるところだ。ある調査によれば、その大半の方には、この物語はあまり興味がないそうである。何故ならば、あまりにも現代との世相のずれが大きく、自分たちの姿に重ねることはできないと、受け入れを拒否する意見が多い。

  隣の中国や韓国と比べて、この国は坂道をころげ降りているような衰退のプロセスに入ってきているように感じている人が多い。財政赤字少子高齢化、産業競争力の劣化、失業率の増大、格差の拡大、年金不安、政治の混乱、官僚機構の拡大など持続する社会の発展を阻害する要因が目立ちすぎる。


  このまま世界の歴史の中に埋没して新興衰退国となっていくのか、新興国に対抗して、さらなる成長を遂げていくのかの岐路に立たされている。カギを握るのは前述した失われた時の被害者たちである。彼らの中から、新たなる資本主義の豊かな精神に期待するところが大きい。

  それは資本主義の根幹であるカネもうけを捨てることではなく、地球にやさしい企業、人類の持続的発展に寄与するビジネス、公共的な価値の向上に貢献する仕事などを通して、自己の存在価値を高めていく方向にある。これが成功すれば、坂の下のドブに転がり落ちることを防ぎ、再び雲の上を目指すことが可能となるであろう。
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