日本の出口

社会構造の変化
  大学生の就職内定率が超氷河期と言われた1998年よりも悪いという。戦後の日本を支えてきた終身雇用、年功序列、定期採用という労働身分の三本の柱の崩壊が始まっているから当然の帰結ともいえる。この労働慣行は経済が成長しているときには順調に作用する。毎年、前年度GDPを上回る経済成長をしているときには、前途には何も不安がなく、1億総中流という安定した社会を築いてきた。

 

  成長経済の最後にバブル景気がきて、それが破れた1990年以降、日本経済を支えてきた成長モデルが崩れてきた。三本の身分制度以外にも、企業の系列、株式の持ち合い、メーンバンク制度、日本的品質管理など世界で最も成功した社会主義国などとも米国からからかわれてきた。実は1980年代の初頭に、米国に次いで第二位の経済大国になったことに対して、やがては欧米の脅威となると感じて、日本に対して、二つの罠が仕掛けられた。

  英国からの品質管理システムと米国からの金融システムであった。クローズドな日本的品質管理に対して、オープンな英国のシステムが国際標準ISOに持ち込まれて国際規格となって、日本の企業を縛りだした。米国で発達した金融工学は、ファイナンスに無知な日本市場に入り込み、バブルを発生させて、1990年には崩壊に導いた。


  かくして日本で成功した企業モデルや様々な慣習に崩壊の兆しが現れ、それにとどめを刺したのが、構造イニシアチブと称する米国からの圧力だった。さて、このような日本的なシステムを崩壊させてきた要因を分析することで、次なる新たな成長へのシステムを作る芽を生み出すことを考える時期に来ている。壊れたシステムを再構築を狙うのではなく、全く新たな視点で物事を構築していくのが正しい方法だ。


  共産主義社会主義はすでに20世紀末で崩壊したシステムであり、米国型資本主義こそこれからのモデルと思っていたら、これも変調の兆しがでてきた。社会主義は規制で崩壊し、資本主義は自由でおかしくなった。人間の立場で考えると、がんじがらめの規制は発展を阻害し、全くの自由は無限大の欲望の制御ができなくなる。答えは適度な規制と自由の兼ね合いであり、これを実現するモデルこそ日本が目指していく出口である。このモデルは一億総中流意識で成功しかかっていたのである。
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