竜馬と弥太郎

岩崎弥太郎氏 
   今年の大河ドラマの主人公は幕末に時代を動かした坂本龍馬であるが、同時代に土佐藩から出て龍馬と肩を並べて活躍した岩崎弥太郎も准主役級で顔を出している。三菱財閥創始者である岩崎弥太郎は龍馬よりも下層階級の出身であるから、子供時代の弥太郎はドラマでは汚い恰好で、粗雑な口のきき方が強調されている。

   恰好のよい龍馬とは対照的な立場であるから、これはこれで良いとは思うが、三菱財閥創始者がこのような姿であったことに対して、現在の三菱グループの会合では異論が出されているようだ。歌舞伎系の演技派俳優の香川照之が演じる弥太郎は、ボロボロに破れた服を着て、髪はボサボサ、歯はガタガタ、鳥かごを背負って売り歩く、最下層の武士だったからだ。勝海舟西郷隆盛に龍馬たちの世話を頼み、1865年、長崎に亀山社中を設立し、龍馬が運営を任された。

   その後、この組織が海援隊となり隊長は龍馬、会計は弥太郎が担当した。龍馬暗殺をへて維新後の1870年には九十九商会という海運業を行う私商社を弥太郎は設立し、1873年には三菱商会と改名した。新政府の軍需輸送を独占して、全国汽船総トン数の8割を手中にして巨利を得た。 さらに海運業からの多角化によって三菱財閥の基礎を築いた。三菱の「スリーダイヤのマーク」は、土佐藩藩主だった山内家の家紋「三つ葉柏」と岩崎家の家紋「三階菱」から合成されている。

司馬遼太郎竜馬がゆく1-8」文春文庫
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