作家サリンジャー氏

サリンジャー氏を悼む
     米国の作家サリンジャー氏について、過去のブログを検索すると、2回書いている。一つはビートルズ関係であり。もう一つは村上春樹氏の新訳についてである。1951年に刊行された作品「ライ麦畑でつかまえて」は全世界で6500万部も売れた大ベストセラーで、日本では1964年に翻訳が出されて300万部売れているという。2003年に出された村上訳も50万部という。

*J.D.Salinger「The Catcher in the Rye」白水社 820円
*F.S.Fitzgerald「The Great Gatzby」中央公論新社 820円
     よく比較される本としてフィツジェラルドの「偉大なるギャッツビー」があり、両者とも、ニューヨーク市を主な舞台としているので、NYに行ったことのある人なら、懐かしく思う場面がしばしば登場する。時代設定として、前者は第二次大戦前、後者は第一次大戦後の波乱に富んだころの小説ということができる。

    ライ麦畑の小説はアメリカでは指定図書となって、若者が読むには相応しくないということになっている。理由は、ジョン・レノンの暗殺者とレーガン大統領の暗殺者の二人がその時に手にしていたからという。主人公の16歳の若者の青春の彷徨というようなテーマで、誰にでもあるその年代のさまよえる魂の物語といえる。小説の題名は、18世紀のスコットランドの詩人ロバート・バーンズの詩からとったものである。

     サリンジャー氏の後半の人生は世間との接触を断ち、謎に包まれていた。もしかしたら、書きためた膨大な数の作品が公表されるかもしれない。主人公が自分の無力さを自覚しながら、社会との距離を保つ物語は、自爆テロとか衝動的な犯罪に走る若者の内面を予言していたとの評価が出されている。

http://iiaoki.jugem.jp/