トップの危機管理

トップの宿命
  ウッズ、トヨタ、オザワという三題話を考える。それぞれの世界で位人心を極めた選手であり、企業であり、政治家であるが、世間からのその叩かれ方も共通している。誰でも、どんな企業でも、どんな政治家でも、貶めるつもりで欠点を探せばいくらでも出てくる。人間あるいは人の作ったものは間違うことがあるものだからである。

  

  トップにいなくても、気に食わぬ社員をクビにしたければ、社員証を携行していないから服務規程違反だと言えるし、会社のボールペンを家に持って帰ったから社用品横領となる。勤務時間中でも、私用のお喋りをした、仕事とは関係のないサイトを見ていた、勤務時間中に喫茶店に行ったなどといくらでも罪状をあげることが可能である。

 
  その世界でトップになれば、同業者はそのトップを奪い取るよりも、何か欠陥を見つけてトップの足を引っ張る方が簡単なことだから、トップになった場合には危機管理に力を注がなければならない。それでもすべてのことを完璧にすることは神にしかできない事だから、問題が発生した時の対応が重要である。


   ウッズ、トヨタ、オザワということで考えれば、すべて初期の対応の仕方で間違ってしまった。参考となる歴史的な事例がある。1982年に起きた「タイラノール事件」だ。ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、鎮痛剤「タイラノール」をめぐって毒物混入疑惑が広がると、事実確認を終える前に、ただちに全商品の回収を指示した。全米で流通していたタイラノール3000万箱、市販価格にして100億円分を即座に市場から消した。

   その後、同社は「自社の利益を投げ出して国民の健康を優先した」と言われるようになり、「グッドガイ即ち正義の味方」との呼び名を得るに至った。J&Jの危機管理は、今でもベスト・プラクティスとされている。危機が発生しても、率直に処理することで、逆に信用を高めることもできる。トップとはそのような宿命を負っている立場なのだ。
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