マイルドなインフレ期待

量的緩和の空振り
   日銀総裁がいう「広い意味での量的緩和」という政策を昨年12月から続けてきた。金融市場に潤沢な資金供給を続けてきた効果は市場金利の低下などに表れているが、企業の設備投資を刺激するなどの実体経済への波及効果は乏しく、デフレ克服への道のりは遠い。2003年からの量的緩和政策でも大量のマネーが市場で空転したが、当時と同じ状況に直面している。

   マイルドなインフレ期待目標と言う俗説が市場に溢れているが、この政策ついては誰も否定はしていない。しかし、日銀が続けているゼロ金利の下では、人為的なインフレはないという実証が、前項で述べたとおりである。日銀による国債引き受けによりカネを市場に入れても、市場で流通するマネーストックの増加につながらない事が問題なのだ。

   資金需要がなくて民間でカネが使われないと、いくら日銀が通貨発行をしても、マネーストックは増えない。日銀が量的緩和に徹した2003年から2005年でも、マネーストックに影響を与えていない。要するにゼロ金利の下では、民間の資金需要は飽和しているからである。欧米諸国でも事態は同じであり、世界金融不安で供給された大量の資金は、金融システム安定化に貢献したが、ただそれだけの意味しかないとIMFでも総括されている。

   問題の克服には妙手はなく、根本には需要不足があるから、需要を増加させる対策しかない。そのためには製造業の生産性の向上、サービス部門の業務改善、エネルギー関連の新産業の創生、新素材や新バイオシステムの開発、医療サービス部門充実など、将来のGDP増加につながる投資環境を生み出していく以外には、経済を成長させて、デフレを克服する妙手はない。財務大臣も漸くこのような発言をするようになった。
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