マグロ騒動

マグロ騒動と多様性保護
   農林大臣が嬉しそうな顔で、勝利の乾杯をしたなどとテレビで会見していたが、その程度の問題意識でいいのだろうか。マグロの刺身と寿司が嫌いな日本人は少ないと思うが、地中海や大西洋で捕獲されたクロマグロを食しながら、これが日本の食文化などと語りながら、得意顔の姿はあまり見栄えの良いものと思えない。また南氷洋のクジラでも同じことが言える。

 

   昨年末にデンマークで開かれたCOP15の会議では、日本は欧米諸国と一緒になって、温室効果ガス削減を発展途上国に訴えていた姿と今回のマグロ保護に対して反対する姿が、どこかで矛盾しているように思える。ワシントン条約は、絶滅する生物の保護を謳ったもので、確かにこれまでは、人類が主に食用としていた品種を対象とするものではなかった。だから今回の魚類保護に対しては違和感を覚える国が多数であったことも理解できる。


   地中海のクロマグロは過去30年間に、漁獲量が3分の1にまで減少しているのだから、絶滅していく生物の部類に入る。うまいからとか文化とか言って、いつまでも以前と同じように口にすることを主張することはできそうもない。


   今年は10月18日から29日まで、名古屋市生物多様性条約機構の国際会議COP10が開催される。生物多様性維持は人類の生存を支え、人類に様々な恵みをもたらす考え方だ。生物に国境はなく、日本だけで生物多様性を保存しても十分ではない。世界全体でこの問題に取り組むことが重要だ。このため、1992年5月に「生物多様性条約」がつくられた。現在、日本を含む190ヶ国とECがこの条約に入り、世界の生物多様性保全するための具体的な取組が検討されている。

    この条約には、先進国の資金により開発途上国の取組を支援する資金援助の仕組みと、先進国の技術を開発途上国に提供する技術協力の仕組みがあり、経済的・技術的な理由から生物多様性保全と持続可能な利用のための取組が十分でない開発途上国に対する支援が行われることになっている。さらに、生物多様性に関する情報交換や調査研究を各国が協力して行うことになっている。
http://www.cbd.int/cop10/
http://iiaoki.jugem.jp/