行政不作為の罪

アスベスト訴訟
  アスベストは天然の鉱物繊維であり、耐熱性、絶縁性、耐薬品性に優れていて、高度成長期の1975年頃がピークで年間25万トン輸入されていた。現在でも約2万トンの輸入量という。日本でも江戸時代には秩父地方で産出され、石綿という名前で販売されていた。これを使って耐熱ボードを生産したり、建設現場で切断したりするときに発生する針状の粉末を吸い込むと、肺に溜まり発がん性物質となることは、戦前から知られていた。
  

  世界保健機関WHOは1972年に発がん性の警告を出した。これに対して厚生省はほとんど対策を取らずに放置してきたことから、大阪地裁は国の不作為に対する賠償責任を始めて認めた。先日の注射器の使いまわしによるB型肝炎についても、行政の不作為が問われたことと全く同じである。本来、政府が機能していたら官僚を指揮して、健康と生活の保全に対策を講じることができたはずだ。長年にわたり政権を担ってきた自民党は、霞が関の官僚に導かれるままに行政をしてきた責任を負わなければならない。

  アスベストギリシャ語で永久不滅を表している。従って人体に入りこむと、長年にわたり、臓器を痛めつけ、ある程度年月を経て発症する仕組みのようだ。アスベストによる、肺がんの労災認定件数は2006年がピークで1000件である。ピークの輸入量から30年後に発症することからみて、今後も数10年はこれによる被害の発生は続くであろう。官僚たちの国民の健康と安全に対する軽視と時の政府の不作為は許しがたい犯罪行為である。
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