年金はどうなった

年金制度のその後

  昨年夏の総選挙で民主党政権誕生の素因の一つに、消えた年金という言葉で象徴されていた年金問題があった。政権発足後、予算の財源や米軍基地問題ばかりで、この年金の話は消えてしまったが、依然として国民の生命と財産がかかっている重要問題であることには変わりはない。日本の年金制度設計は、高度成長期時の発想と同じで、年々経済は拡大成長を続け、賃金も物価も上昇していくことを想定している。デフレ経済下では、全く想定が狂ってくる。

  


  小泉自民党政権が「百年安心年金」と豪語した2004年の制度改革で、「65歳の年金受け取り開始時の給付水準が平均賃金の50%を下回らない」と法律で規定された。あれから6年たって、この間のデフレの影響で、平均賃金の伸び率は増加するどころか減少している。昨年度のデータでみると、平均給与は前年比で3.5%も減少している。これは過去20年間では最大の減少率である。


  現役世代の平均手取り年収に対する年金支給額の割合は所得代替率と表されている。この値が50%を下回らないという意味であるが、手取り年収は伸びるどころか減少しているのに対して、年金支給額はあまり変わらないから、所得代替率は50%どころか、徐々に大きくなり、このまま放置すれば、あと20年もすると、100%近くにまで達する恐れが指摘されている。


  所得代替率が高くなると、65歳の受給年齢になると、働くことをやめて年金を全額受給する人が増えてくる。そうなると、ますます給付が予定よりも大きくなって、年金破綻が早まる恐れもある。その上に、少子化の影響で2050年には総人口が9000万人という、逆ピラミッド型の人口構成になり、2004年に制度設計したものなどは紙くず以下となってしまう。これを救うには、デフレと少子化に歯止めをかける以外に道はない。
http://iiaoki.jugem.jp/