金融破綻から2年

リーマン危機から2年

  万有引力ニュートン株式投資で大損害を被ったときに「天体の動きは精密に計算して知ることができるが、群衆の狂気は数学で解くことができない」と嘆いた。この狂気をあたかも解くことに成功したと思って、少ないカネを梃子の原理で何百倍にもすることができると言う理屈で、カネをバブルのごとく膨らませたが、あえなく破裂させてしまった。2008年9月15日のことだから、僅か2年前のことだった。その後の先進国の経済は深い闇に沈み、未だに明るさが見えない。中間選挙を控えて、オバマ大統領は30兆円もの景気対策を議会に提案している。

  


  実はリーマン危機の10年前の1998年9月18日にも、アメリカの金融界を揺さぶった大事件が起きた。ヘッジファンドLTCMの破綻であった。1993年に発足したこの企業は僅か200人の従業員だったが、1997年にノーベル経済学賞を受賞したショールズ教授とマートン教授を抱えて、彼らが中心となって、国債などの優良債権とジャンク債などの劣等債券の利回り格差で利益を出す仕組みを生み出した。いつのまにか世界に5000社もあるヘッジファンドの中心になり、大量に資金が流れ込んだ。

  この流れはアジアやロシアの債務不履行をきっかけとして、世界的な信用収縮が起こり、行き場を失った資金は安全と思われる米国債市場へと流れ込んだ。そのため米国債は値上がりし、ジャンク債などは値下がりしたて、元に戻らなくなった。そのため、短期間に15兆円もの巨額損失を抱えたLTCMは破綻した。2年前と同じく米国FRBは救済に乗り出さざる負えなくなった。

  ノーベル経済学賞の理論は、統計学正規分布を前提として、標準偏差の異なる二つの株式の保有割合をうまく調節すれば、標準偏差を0にする事ができるというものである。標準偏差がゼロと言うのは、バラツキがないから安全資産と言うことができる。ところが、ニュートンも指摘しているように、時として人は正規分布とは異なる狂気を生むから、バブルは起こりそして潰れることを繰り返す。2018年9月には世界には次なる金融破綻がもたらされることになるかもしれない。

*N.Dumbar著「LTCM伝説」東洋経済新報社 2400円

*Perry Mehrling著「金融工学者フィッシャー・ブラック」 2940円
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