モノづくりの見直し

方向を見失ったモノづくり
  全世界60億人のうち40億人は年収30万円以下で生活している。その7割の28億人はアジアに住む。日本製品は高品質高価格だから、彼らには向かない。品質は高くとも機能を落として値段を下げる努力すれば、これらの人々に歓迎される。韓国はBOPビジネスで先行している。ものづくり日本を支えてきた製造業にはガラパゴス化という皮肉な言葉が被せられている。世界に冠たる高度な技術を作っても、国内では通用するが、国外では振り向いてくれない現象で「ガラパゴス化」と呼ばれている。
*BOP:Bottom of the Pyramid


  代表的な例が携帯電話で、技術は今でも世界一で、資金も人材も十分にあるが、欠けているのは世界に売り込む戦略やシステムがないことである。これは技術の問題というよりは経営の問題である。要素技術ではすぐれていながら収益が上がらない原因は、技術へのこだわりばかり優先しているからである。携帯電話の心臓部にあるDRAMについても、1987年には70%の世界シェアを持っていたが、今では10%となってしまった。高性能にこだわり続けた結果である。並みのものを安価に作ることに徹した韓国のメーカーはシェア50%になっている。

  問題の根本は教育にある。工学系の大学では、どこでも「ものづくり」を売り物としている。確かに、これで日本は世界第2といわれる経済大国になったことがある。いくら優れたものを製造しても、それが売れなくなるシステムや、そのようなコストの高い性能の優れたものを必要としない人たちがいることを忘れている。「ものづくり」で成長したが、何のためのものづくりかという視点が欠けていた。日本の技術者と経営者はいつまでもこれだけに凝り固まった頭を切り替える時が来ている。
DRAM:記憶用半導体
http://iiaoki.jugem.jp/
http://twitter.com/#!/goroh