危機管理は苦手

震災関連死
   311からひと月たった。死者行方不明者合わせて3万人というが、未だに地震津波による被害の全体が見えてこない。北は青森から南は千葉県まで全長500Kmにまで及ぶ災害地であるから、やむおえない面もあるが、行政システムの不手際や決断の遅さによるケースも目についている。災害救助には初動がポイントであることは、1995年の阪神淡路地震を例にとるまでもなく十分に認識しているはずであるが、政府のトップにはこのような意識は希薄であった。

   それは何かしようと思っても法律に縛られるからである。法は緊急時に備えているわけではないからだ。外国では良く目にする空中ヘリからの物資の投下、外国人医師による医療活動などを禁じているが、緊急時には首相の判断で超法規的な処置ができたはずである。米軍は別として、20カ国から被災地にのべ1000人が支援に入った。医療支援も同様であるが、許可に手間取り具体的に活動できたのは医師と看護師50人のイスラエル支援隊だけだ。このチームは今も活動している。それでも避難所の寒さや衛生状態の悪さのため、持病が悪化するなどして亡くなった震災関連死が、岩手、宮城、福島3県で少なくとも300人に達している。

   平時のシステム作成には長けているが、緊急時の対応能力が劣っていることは、現在の民主党政府に限らない。それは、回ってくるジョーカーを最後に確りと受け留める覚悟を持たない人がトップにいるからだ。ただやみくもに会議や委員会を官僚の言うままに立ち上げてみたり、何もできないから、現地に出かけて何かをしているジェスチャーをしてみたりする。政府や官僚任せにしておくと、いつまでたっても埒が明かないので、民間では緊急時には次々と道路の復旧や生活道路の確保に動いた。崩れた高速道を4日で開通させた例などは、英国でも驚きの目で紹介されている。