ある経済学者

シュンペーターの名言(Joseph A Schumpeter)
   「われわれが取り扱おうとしている変化は経済体系の内部から生ずるものであり、それはその体系の均衡点を動かすものであって、しかも新しい均衡点は古い均衡点からの微分的な歩みによっては到達し得ないようなものである。郵便馬車をいくら連続的に加えても、それによって決して鉄道を得ることはできないであろう」と著書「経済発展の理論」に記されている。


   シュンペーター(1883〜1950)はオーストリア生まれの経済学者で財務大臣や銀行家としても活躍した。ワルラスやマーシャルといった従来の経済学者がもっぱら経済の均衡に重点を置き、それゆえに均衡経済学と言われた。技術革新などを外部要因とみなして経済理論に組み込まなかったのに対して、シュンペーターは技術革新のような経済を変化させる要因に注目し、創造的破壊こそが経済の新陳代謝を促し、資本主義を発展させると説いた。この理論は現在のイノベーション理論の基礎となっている。


   1932年にハーバード大学の教授に就任してから、著作と教育に取り組み、「景気循環論、資本主義・社会主義・民主主義、経済分析の歴史」の三大労作を書きあげた。三番目の夫人は日本経済の専門家であり、経済学者としても夫よりも数学的才能に恵まれ、しばしば夫の論文を手助けした。日米開戦の数学的予測など国際関係の分析などを得意としていた。戦後はスターリン体制の脅威を予測して、大統領府から睨まれていた。311の大震災を受けた日本に対して、ご夫妻からの助言を聞きたいと思っている。

*T.K.マクロウ著:「シュンペーター伝」(Prophet of Innovation)一灯舎 3800円