国内か海外展開か

日産の強気、トヨタの苦悩
   カルロス・ゴーン氏が率いる日産自動車が新中期経営計画「日産パワー88」を発表した。今年から5年かけて世界市場シェアの8%への引き上げを目指すという。これによると、日産は世界中で現在6000店ある販売店を7500店に増やす。大半は中国などの新興国での増設となる。日産やGMなど経営が行き詰まった経験を持つ企業は、そうでない企業に比べ、中国市場での動きが素早い。ゴーンCEOは、2011年3月期に10億円の役員報酬を受け取り、2年連続で役員報酬ランキングの首位に立った。WSJ日本版でも経営者ランキングで堂々の首位だ。5年後の2016年度の世界販売台数は720万台で、提携するルノーと合わせて1000万台となる。これでトヨタ、GM、VWの世界3強の一角を崩す見込みだ。

   日産は欧州メーカーとの連携が進み、大震災の影響もトヨタやホンダと比べると少なかった。トヨタはJITの国内サプライチェーンが寸断されて、大幅な減産を余儀なくされた。北米シェアでも、ようやく様々な訴訟からの脱出が進んできた所への減産で、5月の北米シェアは新車販売で前年同月比で33%の減産で、市場シェアも4位に後退した。日本のトップ企業であるトヨタは生産拠点を国内から海外へ移す選択には、これまでにもホンダや日産と比べると躊躇が感じられるのは致し方はない。

   しかしながら、リスク分散、為替変動やTPPへの対応、労働力や供給力の確保など先のことを考慮すると、生産拠点の海外移転は企業存続のためには避けては通れない。トヨタ家の伝統は「日本でのモノ作りに拘り、国内産業を守る」ということであるが、もはやこの家訓とも言うべき伝統へのこだわりを変更するべき時が来ている。幸い米国会計基準での本年3月期の連結営業利益は前期比の3.2倍と回復した。このようなトヨタのおかれている状況は、日本全産業にとっても大きな試練であり分岐点であるように思う。

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