財政と基本理念

国債格下げと民主主義

  来年2012年に大統領選挙を控える米国でも、日本と同様に財政が危機的状況に追い込まれて、米国債の格付けが一部の格付け機関で下げられた。米国と日本に限らず先進6カ国でも、いずれも財政は厳しい状況にある。政府の赤字を削減するために、歳出をカットして国民が求めるサービスを減らせば、そのような政権は支持されなくなる。


  どの先進国でも、1990年以降、日本がしてきたように赤字を積み上げてきたことと同じような事態に落ちることだけは避けたいと思っていても、このような日本化を避けることの難しさを味わうことになってきた。英国でもキャメロン首相が進める歳出削減に対して、若者層から反発が出て暴動が起きた事も目の当たりにしたばかりだ。


  今年になって、アラブの春を求めて、独裁体制を維持してきた国が、次々と民主化運動で崩壊してきているが、これらの運動を支援すべき先進民主主義国家が国家財政の破綻の恐れ、すなわちソブリン危機に陥り、世界全体がちぐはぐな状態に来ていることを認識しなければならない。そこで、先進国は健全な民主主義と財政を両立させる義務を負わされているのだ。中でも、日本は債務残高では対GDP比で今年の末には2.0を越えるとIMFから指摘されている。新政権はこのような状況の中で、模範的な解答を期待されている。