ノーベル賞について

ノーベル賞雑感
  日本人のノーベル賞受賞者数はこれまで18名となっている。出身大学別でみると、東大7、京大5、名大2で、東工大、東北大、北大、長崎大がそれぞれ1となっている。余り意味のあるデータとも思われない。予算が多い順とか、学生や卒業生が多い順とも受け取れる。日本では湯川秀樹先生以来、18名中14名が物理と化学関係である。


   そしていつものことながら、テレビや新聞では「理系離れが心配」とか「もっと海外に出て勉強しろ」とか言うような決まり文句を並べて、日本の科学行政に問題があると言うようなことを、過去に受賞した人も呼び出して、政治的な発言をさせている。ノーベル賞受賞者にはその程度の義務はあるのだと、新聞記者が利用しているだけだ。また、文科省も受賞者を利用して、その分野で予算を獲得したりするのに活用する。


   同じような先端研究分野では、受賞者と同等に業績を上げている研究者は、世界には300名位はいると言われている。だから、毎年、受賞者が発表されると、あからさまにクレームをつける人もいれば、本当は私の方が早かったと思っている人もいる。たまたま推薦人の力が優っていたとか、幸運に恵まれて受賞しただけのことなのだ。


   日本が戦後30年くらいで経済大国になった背景には、別にノーベル賞受賞者が貢献したわけではなく、その他大勢の研究者や技術者が智慧や汗を絞った結果である。素材産業、電機産業、自動車産業などにおいて、ジャストインタイムの生産管理システムや世界のどこにも負けない品質管理システムを構築し、メイドインジャパンの名を世界に轟かせたのは名もない人々である。


   ウオール・ストリート紙では、日本の人口は米国の半分であるが、ノーベル賞受賞者数は10分の1しかいない。だから、日本ではノーベル賞をありがたがり、大騒ぎしているのだと揶揄している。中国などは日本の10倍以上の人口があるが、受賞者は日本の5分の1しかいない。それでも今年は日本を抜いて、世界第2の経済大国になる。ノーベル賞は名誉あるかもしれないが、それで国が飯を食えるわけではない。