ローマ帝国から学ぶ

ローマ帝国のドラマ
    紀元前750年頃から紀元後5世紀に及ぶ1300年にわたる巨大ローマ帝国も、5世紀に入り、かっては栄光をほしいままにしていた世界の首都ローマは、たび重なる蛮族の侵攻で、道路や水道設備が破壊され、ずたずたに切り裂かれていく。もはや、ローマ帝国はいちど崩れだした秩序を立て直す力を失い滅亡への道へと落ちていく。ローマ帝国はどのようにして誰が大帝国へ育て上げて行ったか、またどうして崩壊への道へと進んでいったのか、この歴史を勉強することで、ここに文明衰退の方程式を導き出すことが出来るかもしれない。
 
     この大帝国の興亡の歴史には興味を持っている人は多い。仕事でヨーロッパに出かけるときには、イタリー、フランス、ドイツ、英国などの出張先のそばにあるローマの遺跡には必ず足を運んでいた。どうして巨大帝国が滅亡したかについての結論は明瞭である。人間の建設した国はあらゆる側面ですべて調和が取れていなければならない。この調和が崩れたときに、崩壊の兆しが現われるのである。政治、経済、文化、学問、医療などさまざまな細かい要素まで数値化して多変量解析をすることから、文明崩壊の方程式を構成することが出来る。この式を19世紀の大英帝国、20世紀のソ連邦に当てはめてみると、ほぼその崩壊の時期まで予測することが出来る。

    アメリカのHBCとイギリスのBBC共同制作の超大作歴史ドラマROME(ローマ)がDVD化された。舞台はBC60年〜BC30年頃の共和制末期のローマで、支配者の哲学、愛と欲望の交錯、征服と裏切りの葛藤、誇りと尊厳など現在でも変わらぬ人間社会の豊かなテーマが描かれている。総制作費200億円で、企画から撮影終了までの年月日が8年間であり、イタリアのチネチッタ撮影所に敷地面積2ヘクタールの古代ローマ都市を再現したと言う超大作である。

参考図書:
*ギボン「ローマ帝国衰亡記」岩波文庫
*モンテネッリ「ローマの歴史」中公文庫
塩野七生ローマ人の物語新潮文庫
*辻邦夫「背教者ユリアヌス」中公文庫