経済学で解決できる事

ノーベル経済学賞2011

   今年もノーベル経済学賞は米国の二人の教授となった。1980年頃からこの賞は9割以上が米国人となっている。そしてその受賞内容の殆どが数学や統計学を駆使した実体経済へ応用できる理論構成だ。本年度はニューヨーク大学のサージェント(Thomas J.Sargent)教授(68)とプリンストン大学のシムズ(Christopher Sims)教授(68)に授与された。授賞対象はさまざまな事象が経済にどのような影響を及ぼすかを解き明かした研究である。これにより現在の経済危機も打破できる可能性があるともいうが、住宅バブル崩壊、リーマン破綻など何も防げなかった。

   経済は常に長期的な財政政策や金融政策の転換といった予測可能な事象と、原油価格の高騰や家計消費の減少といった予測不能の事象の両方の影響を受けている。1970年代から80年代にかけて、体系的な政策転換と突然変動現象がマクロ経済へ短期的あるいは長期的にどのような影響を及ぼすかを判断できる手法を提案した。ノーベル経済学賞選考委員会は「両名の研究は現代のマクロ経済分析の強固な基礎を築いた」と説明しているが、現象が起きてから後付けで説明したところであまり意味はない。役に立たない地震予知研究と同じだ。

   ノーベル賞は全部で6部門あるが、経済学賞だけは日本人には受賞者がいない。2008年秋、米国で発生したリーマン・ショックに対して、当時の日本の財務大臣は、その日本経済の影響を聞かれて「日本経済は蚊に刺された程度の影響」と国会で答弁した。しかし、その後の日本経済は100年に一度の大不況に陥り、国税はガタ減りした。財務大臣の答弁は東大などの経済学や財政学の御用教授から耳にしたことをそのまま口にしただけだろう。日本では数学が不得手だから法学部や経済学部に進学するという。だから、基本的に経済を数学的に処理する研究にはなじまない先生が多い。その上に、権威主義的な考えに取りつかれていたら、日本では経済学賞は当分もらえる人材は育たない。在米の日本人経済学者にはもらえる可能性はあるかもしれない。