日本的システムの限界

出口のない日本国民の悲劇 
   海外メディアでの日本に関しての報道は、的を得ているものもあるが、かなり偏見に満ちているものもある。だから、いちいちそれらに反応してもあまり意味はないが、日本人として気になることも事実である。これまでにも目についた日本に関する報道はできるだけ取り上げてきたので、最近、英国のエコノミストの記事を基にして、考えを述べたい。日本では保守政治家が改革と称して、米国からの要求に従って政策を実行してきたが、たいていの場合は成功していない。なぜならば、霞が関の官僚たちの積み上げてきたシステムは、頑固な壁に守られているから、たとえ、一部に穴があいたとしても、その穴は彼らにとって都合のよいように修復されてしまうからである。

   年功序列とか、終身雇用とかいう制度は官僚組織では根強く残存して、これから流れ出てくるものが、業界団体という法人や関連企業などへの天下りというものである。このような強固な組織(zombies)に対して、一般の人は無力で、汗水たらして金を稼いで税金を支払うことで、この城壁をさらに崩れないように養っているようだ。官僚組織は民間企業から吸い上げる養分から成り立っているし、民間企業も護送船団とか言って、官僚から守られている。だから、株式会社とは言っても、余り利益が出なくても生き延びていくことが可能であった。日本企業のROEは欧米企業の半分以下である。この世界的な経済危機の中でも、日本企業の大型倒産件数は欧米と比べて少ないことが、すべてを語っている。

   民間人はいくら頑張っても、税金だけは増えて、親世代よりも豊かな暮らしができない国家のシステムが出来上がっている。日本という島国だけで生活して、働いている人々には、このような欧米とは異質なシステムが理解されていないことが最大の悲劇である。要するに日本人には出口がない絶望的な社会に生存しているのである。このことに気がつかないことがさらに輪をかけている。史上最高の円高になり、もはや企業は日本の国内に留まっていては破綻を待つだけとなりかねない。日本的な慣行やシステムを大変革していくいい機会が来たとも思われる。
http://www.economist.com/opinion/displaystory.cfm?story_id=13862513

*ROE(Return on Equity):株主資本利益率で、高いほど株主にとって好結果で、効率的な経営が実施されている。
ROE = 当期純利益 / 株主資本 × 100