崩壊寸前の年金制度

泥沼に嵌った年金制度
    2004年の年金法改正で「100年安心」とうたわれた日本の年金だが、10年も持たずに破綻しようとしている。財務官僚は財政を破綻させ、厚労官僚は年金制度を破綻させようとしている。頭がいいと言う彼らのやり方はすべて無理やり作った辻褄合わせのシナリオで、まさに砂上の楼閣だったことが明かされた。突如出された厚生労働省が示した年金支給開始年齢の引き上げ案は、当分国会への提出行われないが、問題が消えたわけではない。

    平均年齢が上がっているのだから支給開始年齢を引き上げるのは理解できるが、ここまでに年金制度を破綻させたのは、やはり厚労省の制度設計の甘さであろう。現在の厚生年金制度は昭和29年(1954)に誕生した。誕生してから加入者が増えて1970年ごろまでは、支払者と受取者の割合が10対1だったが、2010年には3対1にまでなり、このままだと2040年には1対1となる。このため世代間の格差が大きくなり、現状でも、70歳以上の人と30歳以下の人では格差が5000万円にまで拡大している。


    1970年頃までは、年金の積立額が増え続けたし、経済が成長期で利息を増加することを見越して、官僚たちは資産売却で問題となったグリーンピアなどの投資を積極的に行った。これによる積立金の毀損が膨大になったことも年金制度破綻の原因である。これの責任を誰もとらなくていいような制度設計をしていた官僚の罪は重い。これをものを言わない国民に負担させるのだから、官僚の味方をする人はいない。


    経済状況の先行きが不透明な中で、年金の支給開始年齢を68歳まで引き上げると言うことは、もはや老後なんてものは存在しないのと同じだ。財政赤字と同様に年金問題も、国民には責任はないのだが、国の制度設計の欠陥を責めても解決の道は見えてこない。年金制度存続ためには、実際問題として「支給開始年齢を引き上げ、なおかつ給付額もカットする」という二段構えの大鉈を振るわなければ安定しないだろう。全国民が等しく痛みを分かち合わなければならないのかもしれない。