坂の上の雲について
乃木希典大将
米国陸軍士官学校
NY市からハドソン河沿いに車で2時間ほど北上するとウエストポイントに達する。そこには米国陸軍士官学校がある。河を見下ろす高台にありキャンパスは特別の日以外は一般に開放されている。住んでいた所から1時間ほどの所だったので何回か出かけたことがある。ある時、通りかかった学生と話をしていたら、日本人ならGeneral Nogiを知っているだろうと聞かれた。彼の話によると、ここで使われている教材に乃木将軍のことが取り上げられているという。
NHKで放映されている「坂の上の雲」で、将軍のまずい指揮でなかなか旅順要塞を落とせないことを見ながら、急に前述のことを思い出した。日露戦争を主題とした司馬遼太郎のこの小説は1968年から産経新聞に連載された。ちょうど日本が高度成長期に差し掛かるときだったので、戦争を仕事に置き換えて、当時の官僚やビジネスマンたちが自分たちのこれからの姿を思い描いたものだった。
士官学校の学生の話は、戦いが下手で軍人としてはダメな乃木将軍のことではなくて、国への忠誠心と責任感に溢れた教材として使われているとのことだった。 西郷隆盛を中心とする鹿児島士族が反乱を起こした西南戦争で、乃木は政府軍として参加していたが、敗走して軍旗を薩摩側に奪われてしまった。そのことが軍人としての生涯を通じてのトラウマとなり、明治天皇に殉死した。この信じられぬような軍人としての責任感の強さは、国内よりも海外において評価され、軍人の責任という徳目の好例として、士官学校の教材として使われているという。
1877年(明治10年)西南戦争
1904年(明治37年)日露戦争、ポーツマス条約(1905)
1912年(大正元年)