日本の製造業

自動車と鉄
   公正取引委員会新日鉄住友金属との合併を承認するという。新会社は来年10月に誕生する。1970年の富士製鉄と八幡製鉄の合併、2003年の川崎製鉄日本鋼管の合併に次ぐ、製鉄会社の合併だ。合併して誕生する会社は生産量では、インドのミタルに次ぐ世界第2位の製鉄会社となる。20世紀では鉄は国家なりと言われて、1970年代からの日本の高度経済成長の牽引車となっていた。この頃から始まった自動車や電機会社の発展に寄与するところが大きかった。

    バブル崩壊後、鉄に代わり車と電子が日本経済のバックボーンに成長して行った。しかしながら、自動車やテレビなどの完成品は容易に新興国がまねできるものであり、今では20世紀の鉄に代わる強力な機関車の役割をしているとは言えない。日本産業の象徴とまで言われていたトヨタは2008年から新車販売台数で世界トップの座にあったが、僅か3年で再びその座をGMに奪われることとなる。2009年6月にトップに就いたトヨタ家の4代目御曹司にはツキがなく、米国での大規模リコールと東日本大震災という不運を受けた。米国での信用低下以降、米国市場で販売シェアが16%から14%に落ちてしまい、大災害がなくてもトップの座を維持するのは難しいと言われていた。

   世界の自動車産業GMVWトヨタG、日産&ルノーGの4大グループで鎬を削る状況となってきた。これに韓国の現代が台頭して、数年後には5強となっているだろう。電気自動車の普及は他業種からの車への参入を容易にするから、ビッグ・スリーからスモール・ハンドレッドという時代も遠くはない。ものづくり日本製造業のシンボルであるトヨタには、古い工場や生産設備を整理して、これまでの負の遺産を払拭して再び21世紀を代表する産業としての期待がかかっている。合併して出来る鉄の新会社も、再び自動車会社を支える力となるであろう。