強かな交渉術

貿易交渉の難しさ

  国連の世界貿易機関WTO)の閣僚会議が新多角的貿易交渉ドーハ・ラウンド)の包括合意を断念した。WTOでは中国など新興国の台頭で、従来のように先進国主導でルール作りができなくなった。世界の大勢は、一部の国ys地域との貿易枠組みに重心が移っている。これで日本にとって米国中心の環太平洋経済連携協定(TPP)や、中国や韓国を含めた地域間の枠組みの重要性が一段と増したが、日韓首脳会談でも日韓経済連携協定(EPA)は進展しないなど通商戦略の前途は多難だ。


   

    日本にとっては、日中韓FTAの方がTPPよりも優先度が高い。米国主導のTPPと日中韓の交渉を同時に進め、環太平洋を巡る枠組みで主導権を握りたい米中の思惑を利用するという戦略が描けるからだ。すでに下交渉は終わり、来春の日中韓首脳会談で交渉入りに合意する見通しだ。国際交渉では自国が一致して向かうと言うのは下手なやり方で、国内の反対を泣きとして利用する強かな交渉術を駆使しなければならない。また、相手の嫌がることは何かを絶えず考えておくことも重要だ。例えば、米国との交渉では、日中韓の3カ国が仲よくすることは米国にとって好ましいことではないので、日中韓FTAはTPP交渉でも重要となってくる。面と向かっては仲良くして、裏では相手の嫌がることをする強かな外交力を利用してほしい。