利権ビジネス

利権ビジネスモデルからの決別
   八ツ場ダムと普天間基地問題には共通する観点がある。それは双方とも自民党政権時代のビジネスモデルである利権構造に関係しているということだ。現在、全国で建設中のダムは大小取りまとめて150か所あるが、八ツ場ダムはその規模から建設中止のやり玉に挙げられていた。計画の段階から60年も経過して、建設反対運動があったとはいえ、ダム本体工事すら始まっていないという異常さである。当然、建設当時の時代環境が大幅に変化しているから、建設目的すら曖昧になっているはずだ。この間、洪水や渇水でダムがあったら良かったと言う話は全くない。それほどに必要なダムならば、もっと建設を急がせるべきであった。

   これまでにこのダム建設に投じたカネが6000億円で、完成するまでにはさらに3000億円必要という。どうして長年にわたって工事が行われてきたのか不思議なことである。このプロジェクトに関係する地元の人たち、工事に関係するさまざまな企業、建設省のお役人、出先の役人など、毎年入るカネで養われて来たようなものだ。要するに、ダムが完成しない限り、彼らはこの工事を永久に飯のタネにすることができるわけだ。直近の5年間でも、ダム建設関連の工事や業務を受注した50社に150名近い国交省出身者が再就職していることが明かされている。例によって「海洋架橋・橋梁調査会」、「ダム水源地環境整備センター」、「関東建設弘済会」など、わけのわからない法人が関与して、これらの法人と関連企業は優先的に工事を落札している。孫請けやその下までも含めると、役人だけでも700人もぶら下がっているものと推定される。

   普天間基地移転については、1996年に日米で合意していたが、この間にも調査と称して毎年5億円の予算が計上され、例によって調査会社という法人が請け負っていたが、ここに防衛庁国交省から役人が数十人天下っていた。2006年には移転先も決まり2014年には移転完了の予定だった。もともと米国側では小規模な施設で承認していたが、いつの間にか、5000億円という巨大プロジェクトという公共工事に変身している。国内の米軍基地に限らず自衛隊の基地に関しては、防衛族議員、防衛省、商社、ゼネコン、調査会社、コンサルタントなど巨大な利権をめがけて、寄ってたかった税金を食い物としてきた歴史である。4年前にも防衛事務次官が逮捕されているが、これは氷山の一角であり、小説「不毛地帯」に描かれているような、官業の癒着ビジネスが実際に行われてきた。

 普天間基地辺野古への移設を何が何でも実行することは日米安保に関連する利権にありつくものにとっては、必須のことなのである。だから「日米安保が崩壊する」とか、基地周辺では直ぐにでも大事故が発生するような脅し文句が新聞やTVで放映されている。ダムにしても基地にしても巨大公共工事は必要な場合もあるが、税金を食い物にする巨大な利権ビジネスモデルだけは徹底的に排除すべきである。それが民主党政権マニフェストの最初に掲げられた精神だったと思う。