ゲームの理論と環境問題

ゲームの理論
   ゲーム理論は利害の必ずしも一致しない状況における合理的意思決定を考えるための数学理論であり、1944年に数学者フォン・ノイマンと経済学者モルゲンシュテルンの書物「ゲームの理論と経済行動」によって世に知られた。その後、経済学、経営学,行動科学,政治学などの社会科学全般に互いに影響を及ぼしあう学問分野に成長した。経済学では1980年代から産業組織論や情報の経済学を中心に盛んに応用され、1994年のノーベル経済学賞が3人のゲーム理論研究者に対して与えられた。2005年にもこの理論の応用で2人の受賞者が出ている。

    ゲームの理論では相手より優位に立とうとすると、なぜか最善の選択を選べないという囚人のジレンマに陥ることがある。ゲームの理論のどの本にも書いてある囚人のジレンマとは、ある事件に二人の容疑者がいて、それぞれ看守から別に呼ばれ、次のように言われたような場合のことだ。「二人とも自白したら、懲役はともに4年。しかしどちらか一人しか自白しなかったら、自白した方は情状酌量で懲役1年に軽減するが、その代わり自白しなかった方は10年の懲役を覚悟してもらう。それと、どちらも自白しなかった場合は半年の禁固だ」。

    この場合一番刑が軽いのは、どちらも自白しない場合の半年の禁固は自明である。でも囚人はお互いにこう考えるはずだ。「オレが黙秘しても、あいつが自白したとしたら、あいつは1年で釈放され、オレは10年間刑務所で暮らすことになる。それは御免だ」。結局、この場合は、二人の囚人はどちらも自白して、ともに4年の懲役を受けることとなる。自分が助かる最善の道が、実は一番いい方法ではないいうことを囚人のジレンマというのである。この種のジレンマは商店街にもよくある。自分さえ助かればいいという策が、結局は自分の首も絞めるという事例がある。それを回避する方法は簡単で、自分だけ助かろうとしないで、協力し合おうと考えることだ。そうするとその瞬間に囚人のジレンマはきれいに消えてなくなる。

    地球温暖化を解決する環境問題の先進諸国と発展途上国の対立関係を見ていて、ふとこのゲームの理論を思い出した。フォン・ノイマン先生は50歳少しで世を去ったが、化け物的な頭脳の持ち主で、原爆構造の難問を一人で解決したり、現在のパソコンの計算システムを構築したり、有名なモンテカルロ法なども生み出している。不思議とノーベル賞とは縁がなかったが、物理学賞や経済学賞受賞者の業績を程度が低いと言ってからかったりしていたという。アインシュタイン博士と同じプリンストン大学に在籍していた。

ノーベル経済学賞の対象
1994年:非協力ゲームの均衡の分析に関する理論の開拓を称えて
2005年:ゲーム理論の分析を通じて対立と協力の理解を深めた功績を称えて