TPPと農業

農業の向かう道
   20年前のオレンジ、牛肉、サクランボなどの自由化の時にも、日本の農業には壊滅的な被害が及び、もはや近江牛や温州ミカンは食べられなくなると大騒ぎしていた。ところが現在では、先日の韓国大統領のホワイトハウスでの歓迎晩さん会でも和牛が出されたと言うように、NYやパリーの一流レストランでは和牛はメニューにもなっている。また、ミカンやサクランボの生産は当時を上回り、東南アジア諸国には輸出までされている。また、日本のミカンはカナダではおおもてだ。


   日本の農業は過去20年間で生産量は半分となり、専業農家は20%となり、従事者の7割は平均65歳を越えている。この間、税金からの保護資金は毎年5000億円にもなっている。このままの状態を続けていても衰退することは目に見えている。食糧自給率40%と言われているが、これは摂取した熱量換算での数値であるから、毎日の食卓で国産品が40%というわけではない。通常の家庭ではほぼ80%は国産品が食卓に上がっている。

   金額からみた農業輸出国のトップは米国で、その50%は大豆、トウモロコシ、小麦である。第2位は何とオランダで海抜ゼロ以下の面積が3分の1の小国で、穀物自給率は僅か15%であるが、その輸出物はチーズ、鶏肉、半加工食品など付加価値の高いものばかりだ。デンマークも金額は劣るが内容はよく似ている。これに対して日本は米国の50分の1の金額で、国別では60位だ。


    日本はオランダの10倍の国土面積であるが、その70%は山岳地帯であるから、耕作地の比較では山のないオランダよりも少ない。日本独特の米作は兎も角として、米国や豪州のような大規模農業には適していないことは明らかだ。目指すべきは付加価値の高い農業構造への転換で、畜産はもとより野菜や花卉、果物など高級食材への傾斜を高める方向しか道はない。農業輸出額の規模をせめて米国の10分の1くらいの規模を目標とするべきだろう。