映画鉄の女

M.サッチャー(1925~ )アカデミー賞

   本年度アカデミー作品の「鉄の女」を見た。映画は老境に入った彼女の回想録風に進む。ある程度、首相在任中(1979~1990)の出来事、特に英国の議会制度や階級社会、北アイルランド紛争フォークランド諸島紛争、冷戦下の米ソ関係などの知識がないと分かりにくい内容だ。
 
   19世紀、日の沈まない帝国と言われた英国が20世紀に入り老大国として衰退し、特に第二次大戦後は米国の力が大きくなり、古い制度を残存させた政治や経済の行き詰まりから、英国病にかかっていると言われていた。殆ど同じ時期に第49代米国大統領だったレーガン氏(1981~1989在任)とは共通した価値観をもち、規制緩和、小さな政府、国有企業の民営化などを急進的な改革を断行する強い姿勢を保ったが、インフレ政策で失業者は増大して社会不安も醸成した。


   改革を進めるにあたって障害となっていた労働組合の影響力を減らし、所得税法人税の大幅減税で景気の振興を図り、その代わり付加価値税を8%から15%に引き上げた。教育改革についても、政府の発言力を強める一連の改革を進めた。役者は米国の有名女優メリル・ストリープで、アカデミー主演女優賞を獲得した。米国人の彼女が、サッチャーの英国流の発音をする努力は演技を越えるものがある。