原発事故調査委員会報告(6)

原発事故調査委員会報告(6)

   昨年の311の事故発生以来、当ブログでは過去5回にわたり事故の態様及びその原因についてまとめてきた。いま読み直してみても、余り訂正すべき点は見当たらない。大飯原発再稼働にあたり、反対派の論拠は、未だ東電原発事故の原因が究明されていない点が挙げられている。政府の調査団の公式見解が出されていないが、主な原因は二つある。先ずは原発安全神話のために、地震津波に対する対策が不十分であったことである。二つ目は電源喪失により冷却水の停止に対する処置を誤った事である。直接的な原因は確かに津波による電源喪失であるが、津波を被らない対策、電源喪失でも海水導入などの手段を取らなかった事など、明らかに天災による放射能流出ではなくて、これは明らかに人災なのだ。冷却水喪失で燃料棒溶解が起きたら水素発生を予見して、格納容器や建屋に水素を排出する手段を講じて、水素爆発を防止する処置を取らなかった事も人災である。

  

  冷却水として海水注入を東電が躊躇したであろうという推定は昨年6月の第1回のレポートで指摘してきた。緊急冷却装置が稼働中にその準備に取り掛かっていたら、燃料棒溶解という事態を防げたはずだ。M9という地震学者の想定をはるかに超えた地殻変動だった。原発装置全体が地震津波に痛みつけられた挙句に、原発建屋の水素爆発という事故だった。圧力容器と格納容器には多少の破損はあるものの、チェルノみたいに破壊されないで残っているので、容器爆発という最悪のケースを免れることができた。これは不幸中の幸いだった。


    電源が失われて、しかもECCSまで停止した。冷却水の供給が止まったのに、海水でも何でも投入する準備を直ぐにすれば、まだ爆発は防げたが、これに対する意欲が東電側にみられなかった。技術者は設備を保全すると言う本能があるため、海水注入で炉が完全にダメになることを恐れたものと推定される。水素爆発は当然に予想されたことだが、斑目原子力保安委員長が否定していたことも実務を知らない学者の悲劇だ。いずれにしても、最悪の条件がいくつか重なった事故だった。しかし、チェルノように直接的な放射線被曝による死傷者は出ていないことも幸いなことだ。