女性宰相の登場

女性宰相の登場

宰相さくら子
   コレキヨは言うまでもなく226事件で暗殺された高橋是清(1854~1936)だ。この本の中では「201X年」となっているが、橋本竜太郎から数えて12人目の総理が架空の日本国総裁霧島さくら子だ。だから物語は2014年か15年のことだろう。この年に日本の消費税が8%から10%になる。この本では不況のときに増税はしてダメだと言っている。不況の今こそ財政出動をすべきだという説である。高橋是清が現代に蘇って現代の首相のさくら子を指導する内容だ。

   彼女は総裁就任一年目に、衆議院本会議で首相就任演説をする。この演説が以後の日本復活と世界史をかえる原点になるという設定である。概略述べると次のような演説となる。「日本政府はこれまで、皆さんを苦しめるような政策ばかりを続けてきました。国民経済が縮小していく状況で、日本政府は国民所得の減少を引き起こす政策を続けた」ために、「所得が減り、失業率は上がり、大変悲しいことに自殺者は毎年三万人を超えています」。このような結果を招いたのは「間違いなくデフレの深刻化が大きな原因です。それにもかかわらず、政府はデフレ対策を怠ってきました。それどころか、増税公共投資の削減など、デフレを促進する政策を遂行してきたのです」。

   「これは間違いなく日本政府による人災です。ですが、その日本政府を選んだのは、いったい誰なのでしょう?」。「日本政府の目的は、国民がより豊かに、より安全に暮らすことを実現することである。日本政府はこれまで、この基本的な目的を忘れ、一部の政治家や省庁の自己目的実現のために、歪んだ政策を打ち続けてきました」が、まだ間に合う。「日本は世界一のお金持ち国家です。対外純資産は世界一、最も成長する可能性を持つ国です」。だからこそ「成長路線に戻ればいいのです」。そのためにはまず「日銀法を改正する」と締めくくった。
   
   デフレ下での増税案が決まろうとしているが、1923年の関東大震災、1929年の世界大恐慌のデフレ期に、大蔵大臣に就任した高橋是清は積極財政政策でデフレからの脱却を遂げた。現在、財政赤字が1000兆円と言う状況で、さらに国債を発行できるか、公共事業は時代遅れではないか、日本銀行の独立性を破ればハイパーインフレを引き起こすのではないか、など数々の疑問があるが、この本では、今の日本に必要な経済政策が解き明かされて行く。果たして、日本国の未来はサクラ色となるであろうか。


三橋貴明著「コレキヨの恋文−新米女性首相が高橋是清に国民経済を学んだら」小学館1680円