鉄鋼の大型合併

鉄鋼の大型合併
新日鉄住金の誕生
   新日本製鉄住友金属は2012年10月1日に統合する。 これにより、世界最高の技術力とものづくりの力で、鉄事業を通じて社会に貢献する「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」を目指すと、既に公開されている新ホームページに記載されている。日本は1945年に生産量零の時代から、僅か25年で粗鋼生産量1億トンという鉄鋼大国になった。文字通り、鉄は国家なりと言われて、高度成長産業の牽引車の役目を担ってきた。量だけでなく質でも世界最高峰の製品群を生み出してきたし、今も継続しているだろう。役割を鉄からバトンタッチした自動車産業も、鉄鋼産業が育成して来たようなものだ。
   

   量的には世界トップの会社はインドの企業だが、自動車用鋼板、電磁鋼板、缶用鋼板、特殊レール、圧力容器や原子炉用鋼では日本企業の力は抜きんでている。また、生産システムでも、省エネ技術、公害防止技術などでも世界一の技術を維持している。最大の弱点は財務内容で、今回の合併に至る経緯にもこのことが関係しているのだろう。最近の株価の動きを見ても、合併新会社の収益力に対する投資家の懸念からか、両者とも年初来安値に近付いている。

   高度成長期でも乞食か王様かと言われていたほど、鉄は景気変動に敏感な体質で、世界的な経済不況のさなか、一緒になればすむと言う話ではない。大規模な設備合理化を進めて、全国にまたがる流通網を需要家の視点で再整理することも重要だ。安い韓国や中国からの輸入も増加しているから、厳しい合理化なくして合併の成果は出るわけがない。

   未だに色濃く残存している鉄は国家なりと言う標語とか、重役など役職者の多さ、一流企業の意識などすべて払拭する事で、21世紀にふさわしい新たな未来が展開するであろう。幸い社会インフラにおける鉄鋼の使命は終わらないのだから、新しいビジョンができれば優良企業へと転換できるであろう。1+1を2以上にしないと、合併した意味がなくなる。お互いに過去のいきさつを捨てて、新会社を設立する意気込みで仕事をしてもらいたい。