TPP(2)

TPPについて(2)

多国間貿易交渉
国際貿易協定
   国連のWTO世界貿易機関)は貿易に関するルールを取り扱う唯一の国際機関で、2007年3月現在、150ヶ国もの国々が参加している。WTOの目的はモノ・サービスなどの貿易がルールに基づいて円滑に行われることを助け、加盟国間の貿易紛争を解決し、更に自由で公正な貿易を進めるための多国間貿易交渉(ラウンド)を開催することだ。1995年に前身のGATT(関税および貿易に関する一般協定)が解消されてWTOが成立した。GATTは協定に過ぎなかったが、WTOの決定は強制力を伴う強力なものだ。これまでにも何回もラウンドが開かれているが、様々な分野で合意に達することは不可能であろう。そこでEPA,FTA,TPPなど他の形で2国間あるいは多国間での貿易交渉が盛んとなってきている。TPPについては既に日本から参加が表明されているが、相変わらず国内では賛否両論で賑わっている。

     当ブログでは、これについて特に反対や賛成をしてきたわけではなく、どちらかと言えば消極的賛成で態度を曖昧にしてきた。WTOの例を見ても多国間の貿易交渉がそう簡単にまとまるわけがなく、あまり無駄なことに精力を浪費する必要はないと思っているだけだ。基本的な態度は前述のWTOの精神にある通り、自由で公正な貿易を進めて、相互に発展して行くべきというのは正しいと思う。書店で見る限りTPP反対論の方が多いが、新書版で気軽に読める代表的なもの反対と賛成の内容を紹介しておきたい。

    中野剛志著「TPP亡国論」集英社新書。住宅ローン、リーマンで躓いた米国が巻き返しを図る戦略ととらえて、戦略物質である穀物類の輸出先の標的を日本としている。TPPを許せば、社会的文化的な規制や慣行まで侵され、デフレと格差は拡大し、ひいては、食の安全、医療、金融に至るまで弊害が発生すると懸念している。日本が取り組むべき事は、公共投資による需要作りというケインズ的な手法が重要と締めくくっている。いまさらケインズかと思う。

    戸堂康之著「日本経済の底力」中公新書。デフレ解消と震災復興のためには、海外との貿易、投資、知的交流を活発化させることがポイントという。日本の持つ高度な技術を生かして、震災地を始めとする各地に産業集積を結集することだ。関税については日本ではなくて他国の関税の存在を問題とすべきである。日本独自の農産物は付加価値を高めることで輸出産業となる。日本独特の文化はアニメなどと共に海外での需要は高い。グローバル化の流れに逆らうことはできない。

    こうして並べてみると、やはり、消極的な賛成論に歩があるように思える。原則は自由貿易という枠の外で日本が生きていけるとは思えないからだ。1970年からの高度成長期には、日本のGDPの40%は輸出産業で稼いでいたが、現在はわずか10%となっている。それだけ国内でのものやサービスで生み出す価値に依存している事が分かる。日本が21世紀において国際的に確かな地位を占めるためには、国際間の自由で公正な取引を欠かすことはできない。また国際的な取引の盟主としての日本の地位を確定したい。