孤愁サウダーデ

「サウダーデ」完結
1.文人モラエスは、元ポルトガル神戸総領事で晩年を妻の故郷徳島で過ごし、日本の風俗・習慣等を紹介する多くの著書を残した。故郷から遠く離れた徳島に移り住み、徳島を深く愛したモラエスの思いは何だったか。未完の小説「孤愁−サウダーデ−」の著者・新田次郎氏の次男で数学者の正彦氏が引き継いで完成させた。

2.井上靖氏が「いくら息子さんでも作品を書き継ぐことは難しい。世界にも例を知らない」と語った。大学を退職後、父が残した9冊の取材ノートを手に、翌年夏のポルトガルリスボンを皮切りにマカオ、長崎、神戸、徳島とモラエスゆかりの地を訪れ、父の取材を追体験した。妻・およねが眠る徳島で、墓守りをしたモラエスの晩年を描いた。

3.モラエスは明治・大正期の日本の自然美や日本人の祖国愛を改めて発見し、衰退期にあったポルトガルの再興を視野に入れながら、多くの著書を通じて「祖国よ、日本を手本にしよう」と呼びかけた。「国家の品格」、「日本人の誇り」などの多くの著作で伝えてきた日本人の素晴らしさを、モラエスがすでに発見してくれていた事を改めて認識させてくれる内容だ。

4.未完となった父の絶筆を、息子が完成させた。明治〜大正期の日本の美しさ(=国家の品格!)、日本人の美風(=日本人の誇り!)を欧米に紹介したポルトガル人外交官モラエスの評伝だ。日本人の妻を娶り、日本で終えたモラエスの会えない人、戻らない故郷への思いはまさにサウダーデだ。
『孤愁 サウダーデ』(新田 次郎・著 , 藤原 正彦・著) 文芸春秋社 2100円
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