何が期待できるか

新内閣から何が期待できるか
1.日経平均が311以前の水準に戻った新年だが、素直には喜べない。株価を釣り上げているのは外資であり、国内状況が変わったわけではないからだ。むしろ金利が0.6%から0.85%までジワリと上がり、円安が進行しているので、電力ガスの値上げの方が気がかりだ。大新聞が権力べったりも気になる。


2.新聞の「再始動、周到な布陣」、「首相は実務と理念両構え」、「重鎮と側近を要所に」などという見出しを見ていると、背中に寒気を催す。自民3役に女性2人などは7月の参院選挙対策と自ら言っているが、女性有権者をバカにした女性蔑視の表れだ。官僚主義が復活して、政策権限は党から内閣に移ったから女性でも誰でもいいのだ。


3.内閣官房参与に財務と外務の元次官と小泉の参謀飯島をおき、首相は神輿になっていればいいという布陣だ。官僚とマスコミを抑えて、既得権益重視へと政治が向かう事は明らかだ。海外からは「記者は役所の広報担当」とか「真実を伝えない日本の新聞」と批判されている。新聞はネットに押されて売れなくなり、部数拡大のためなら何でも言うこと聞く権力の犬となる。


4.日本の有権者の70%は大新聞とテレビの影響を受けて投票するそうだ。だから、選挙結果は新聞報道通りとなる。自民党過半数と報道すれば、この党が原発容認と分かっていても、脱原発派まで自民党と書いてしまう不思議さだ。戦前も、戦中も、戦後も大新聞は権力と癒着していた。新聞不買運動でも起こす時だ。

名だけの中華思想

中華思想か阿Qか
1.阿Q正伝(あきゅうせいでん)は魯迅によって1921年から新聞に発表された長編小説だ。阿Qという近代中国の一庶民を主人公としている。ある村で、その日暮らしの日雇いの阿Qという男がいた。金も家もなく、女性にも縁がなく、字も読めず、容姿も不細工と いう存在で、村人からは馬鹿にされていた。

2.彼には独自の考え方があり、どんなに罵られようが、日雇い仲間と喧嘩して負けようが、結果を都合の良いように取り替え心の中では自分の勝利とすることができていた。革命党が近くの町にやってきたので、彼は革命に便乗して意味もわからぬまま騒ぐが、逆に革命派の趙家略奪に加担したと無実の疑いをかけられて逮捕され銃殺されてしまった。

3.この物語は無知蒙昧な愚民の典型である架空の中国国民を描き出すことで、当時の中国社会の病理を鋭く告発した作品として評価された。毛沢東がこれを談話でしばしば引き合いに出したため、魯迅の名声が高まった。高校教科書にも採用されたため、国民の多くが知っている話だ。また外国向けにも翻訳されている。

4.魯迅は仙台医学専門学校(現東北大学医学部)で解剖学を学んだ。ここで日露戦争における中国人露探処刑の記録映画を見て、同胞の銃殺に喝采する中国国民の無自覚な姿に強い衝撃を受けた。これを機に中国の社会改革と革命に関心を深め、医学から、文筆を通じて中国人の精神を啓発する道に転じた。

5.処刑される阿Qの記述は、中国人露探の処刑とそれを見物する中国人観衆の様子を反映している。中国の自己中心的、覇権主義的動きを中華思想に結びつけて考える人が多いが、そうではなくて、むしろ先進国に対 するコンプレックスによるものと見た方が分かりやすい。中国人を理解するには中華思想より阿Q精神のほうが分かり易い。

6.無知ゆえ、負けても理由をつけて自己を慰め、無闘争心、いつも自己満足している阿Qがもつ人格的特徴は20世紀初頭の中国人そのものだ。阿Qの精神は未だに中国 国民にあり、多くの中国人は近代中国の不振の原因をもっぱら列強による侵略に求め、内部の争いに関して反省もせず、自己改善を怠ってきた民族だ。

派手な政策は必要ない

派手な事は慎め
1.読売をはじめNHKなど大マスコミが恥ずかしげもなく重厚な布陣などと安倍内 閣に大声援を送っている。直面する難問解 決へ意欲が伺われると賛辞の嵐だが、胃腸だけでなくオツムにも問題がありそうな内閣だ。いつ惨事に転換するか分からない。国際投機筋の買いで日経平均が異様に上昇して年を越した。有権者の7割は新聞テレビの報道を信じて、投票の意思決定をするそうだ。お上に支配されていた江戸時代からの日本人のモノの考え方が相変わらず続いている。

2.日銀総裁を脅かして金融緩和させればデフレ脱却ができるなどと本当に信じているのだろうか。言葉だけは危機突破内閣などと大言壮語だが、いつ大幻想語になるか分からない。デフレ圧力は先進国共通の課題なのだ。日本だけのものではない。人口減少、安いモノと労働力を途上国に求めた必然なのだ。

3.安倍内閣のするべき事は日銀を脅かすことではなくて、地道にエネ、素材、福祉、システム、省エネ、防災などの成長戦略を練り上げることだ。国民が安心して子ども育て、カネを使ってくれる道を探索する事だ。さらには、非正規の労働改善、女性労働力の活用などだ。御用学者を集めて、使い古した会議を復活してもダメだろう。

4.デフレ脱却は容易なことではないが、それでも一時的にインフレに行けば、それに従って給料も上がればいいが、その保証は全くない。国土強靭化という公共事業ではゼネコンなど一部の企業が利益を挙げるだけだ。給与に還元される保証はない。安倍にとっては7月の参議院選挙に勝たなければ退陣だから、必死になっているだけだろう。今度こそ国民は見せかけの政策に騙されてはいけない。

孤愁サウダーデ

「サウダーデ」完結
1.文人モラエスは、元ポルトガル神戸総領事で晩年を妻の故郷徳島で過ごし、日本の風俗・習慣等を紹介する多くの著書を残した。故郷から遠く離れた徳島に移り住み、徳島を深く愛したモラエスの思いは何だったか。未完の小説「孤愁−サウダーデ−」の著者・新田次郎氏の次男で数学者の正彦氏が引き継いで完成させた。

2.井上靖氏が「いくら息子さんでも作品を書き継ぐことは難しい。世界にも例を知らない」と語った。大学を退職後、父が残した9冊の取材ノートを手に、翌年夏のポルトガルリスボンを皮切りにマカオ、長崎、神戸、徳島とモラエスゆかりの地を訪れ、父の取材を追体験した。妻・およねが眠る徳島で、墓守りをしたモラエスの晩年を描いた。

3.モラエスは明治・大正期の日本の自然美や日本人の祖国愛を改めて発見し、衰退期にあったポルトガルの再興を視野に入れながら、多くの著書を通じて「祖国よ、日本を手本にしよう」と呼びかけた。「国家の品格」、「日本人の誇り」などの多くの著作で伝えてきた日本人の素晴らしさを、モラエスがすでに発見してくれていた事を改めて認識させてくれる内容だ。

4.未完となった父の絶筆を、息子が完成させた。明治〜大正期の日本の美しさ(=国家の品格!)、日本人の美風(=日本人の誇り!)を欧米に紹介したポルトガル人外交官モラエスの評伝だ。日本人の妻を娶り、日本で終えたモラエスの会えない人、戻らない故郷への思いはまさにサウダーデだ。
『孤愁 サウダーデ』(新田 次郎・著 , 藤原 正彦・著) 文芸春秋社 2100円
http://t.co/ko96bozr

アベノミックス

安倍のミックス
1.安倍のミックスのブレーンはエール大学教授の浜田宏一で、リフレ派と言われる経済学者だ。実業経験のない学者が振り回す空理空論だ。本来、インフレ目標というのは物価上昇の上限を定めたもので、安定している物価をわざわざインフレにする目標は経済原則に反しているから、海外では笑いの種にされている。それでも安倍首相が拘るのは7月の参議院選挙で敗北すると退陣を迫られるからだ。土建業から公共事業で票を買う事が主な狙いだ。

2.財務大臣麻生は政府はいくら借金をしても大丈夫という無策さだ。来年度は大型予算を組むつもりだ。日銀の国債保有高は100兆円を超えたが超低金利なので何も起らない。日銀が更に国債を買うと市場では財政赤字を埋めていると思われて、国債が売られて長期国債金利が上昇して、インフレスパイラルになる可能性がある。選挙前0.7%を切っていた長期国債金利は、昨日には0.8%まで上昇した。このような急な上昇は危険なことだ。

3.インフレが2%になったら日銀が政策金利を上げればいいというが、スパイラルに入ると金利上昇で銀行が含み損を抱え損失が拡大する。過去の事例から、インフレスパイラルに入ると止めることは難しい。かくして日本国債の暴落が起こり、日本は沈没する。千兆円という時限爆弾を破裂させてはダメだ。

4.政治家は中央銀行に圧力を掛けたいという欲望が常にあるが、中央銀行の独立性というのは日本国通貨の信認を守るためにある。白川が物価水準2%について「要請を踏まえて検討することにした」と述べたが、言語道断のことだ。「私は通貨の番人だ。例え首相になるかもしれないが、あなたのいうことを聞き入れるわけにはいかない」と突っぱねるべきだった。日銀は政府の貯金箱ではない。IMFからもいずれコメントが出るだろう。

FBからLINEへ

FBからLINEへ
1.SNSユーザーの平均年令は、FBが42歳、TWが40歳に比べて、LINEは30歳と若い。LINEはスマホのアプリで電話がフリーとなり、しかも絵で表現できるから、言葉もいらないので、日本語以外でも意思疎通がある程度はできる。ただ、登録すると電話帳情報をすべてサイトに持っていかれる。

2.電話帳が公開されるようなものだから、LINEはしがらみの多い年長者には向かないだろう。いまキャンパスで最も利用価値の高いのがFBで、ここのグループ機能を使えば、特定のゼミではすべての連絡がこれでたりる。数年前まではメールだったが、遥かに使い勝手が良い。

3.FBにはオフイス機能があるから、これを使って、レジュメや資料の配布、出欠の連絡、飲み会日程など共有の情報として瞬時に交換できる。それだけではなく、卒業生も入れた包括的な情報交換、学生などの全体の動きまで分かる。LINEは更に、その中で別のグループを作り、親密度を高める道具だ。

意思決定の道

意思決定の道筋
1.脳の働きをシステム1とシステム2に分ける。S1は直観、S2は熟慮を示す。S1とS2の相互作用で意思決定がされる。事故死は病死よりも報道される機会が多いから、リスクの見積もりが高くなるが、病死は事 故死の20倍だ。人はしばしば身近な事例に引かれてS1で結論することが多い。

2.思い込みに捉われて判断する事を認知的バイアスと呼ぶ。脳の重さは体重の2%だが基礎代謝の20%も消費する。だから、S1で問題を処理して、S2の負荷を軽減しようとする。原発とかTPPなど本来S2で処理すべき事を、身近な事例から票稼ぎでS1で決めてしまう。国民性の問題もある。

3.S1ファストは、支配的で、攻撃的で、慌ただしくて、直観的で、表面的で、こらえ性がなく、能動的な態度で、質よりも量を重んじることだ。S2スローとはその逆で、ゆるやかで、物事に注意を払い、熟慮 的で、静穏で、辛抱強く、思慮深い態度があり、量よりも質を重んじることだ。国のエネルギー政策など極めて重要な政策は、本来S2で慎重に決めるべきことだ。

*Thinking, Fast and Slow  by Daniel Kahneman